メラミン樹脂とは?
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの反応で得られる、熱硬化性樹脂(プラスチック)です。電気特性・機械強度・耐熱性・耐薬品性・耐候性・着色性に優れています。
この樹脂は、表面硬度が高く、耐水性に優れており、衛生上無害なため、皿や茶碗などの各種食器類に使われ、また、自由な着色性、良好な表面光沢を利用して化粧版などにも使われます。
1.メラミン樹脂の製法
メラミンとホルムアルデヒドとの反応は、ユリアとホルムアルデヒドとの反応と同様、次に示すような付加縮合反応により、初期縮合物が得られる。メラミンは3個のアミノ基を持っているから、1モル当りホルムアルデヒドが1~6モル付加反応できるが、樹脂を作る目的には通常3モル用いる。
中性あるいはアルカリ性条件下で反応させると、まずホルムアルデヒドが1個付加したモノメチロールメラミンが生成し、次にジメチロールメラミンへとメチロール基の結合量が増加し、最後にヘキサメチロールメラミンが生成する。反応主生成物はこれらのメチロールメラミン類の混合物である。酸性条件下での反応では、ユリア樹脂と同様にメチロールメラミン類の生成と同時に縮合反応が起こり、ゲル化へと至る。メチロール化反応はpH10付近で最も早く、メチレン化反応は逆にpH10付近では最も遅い。pH10以上ではメチロール基間の縮合反応によるジメチレンエーテル化が起こりやすくなる。この反応は樹脂の性質にあまり好ましい結果をもたらさないので、一般にはpH7~9の範囲で反応させる。反応の進行とともに生成物は疎水性を示し、ついにはゲル化するので樹脂液の使用目的に適した縮合度で反応を止める。反応を終えた初期縮合物は、目的に応じてこのままあるいはアルコール類とのエーテル化反応や共縮合などの処理を行って使用される。
1-1.成形材料
成形材料の製造には、アルカリ性触媒存在下(pH約9)、メラミンとホルムアルデヒドをモル比1:2~3で仕込み、75~90℃で反応させた初期縮合物が用いられる。得られた無色透明の樹脂液に充填材を50~60℃で混練した後、乾燥、粉砕、着色、液状化を行うが、各工程や使用する各種添加剤などはユリア樹脂の場合とほぼ、同様である。成形材料の組成は、一般に樹脂分60~70重量%、硬化剤0.5~2重量%で、その他、離型剤や着色剤などが各々0.1~1重量%程度である。成形材料中に1~3%の水分が含まれているのが通常だが、この水分の大小が流動性や硬化時間に影響を及ぼし、硬化時間が長くなったり、ガスの発生量が増えて成形品の光沢不良を起こしたり、シワや色むらの発生やヒズミの原因になる。また、この材料は大気中で吸湿する性質が強く、高温多湿時には吸湿して材料の粒子がくっつき合って固まる現象がみられる。この現象は、常温で密閉された容器の中でも徐々に反応が進み、成形不良や材料の伸びが悪い等の不具合を起こす。それゆえ、材料の保管については、特に高温多湿に注意を払う必要がある。
1-2.接着剤
メラミン樹脂接着剤は液状の初期縮合物を主成分とし、さらに硬化剤、増粘剤、増量剤などが配合されている。具体的には、メラミン1モルに対してホルムアルデヒド2~4モルを用い、pH7~9に調製して60~90℃で数時間反応させる。合板用にはこのまま、それ以外の用途には所望の粘度になるまで減圧濃縮して使用される。濃縮樹脂液は貯蔵安定性が悪いため、メチロールメラミンが析出したり、全体が固化することがあるので、メタノール、エタノール、ブタノールなどでエーテル化を行って安定にする。ホルムアルデヒドの仕込みモル比が高くなるほど、親水性のメチロール基が多く生成するために接着剤の耐熱性が低下する。逆にホルムアルデヒドの仕込みモル比が低すぎると架橋構造の生成が不十分となり、接着剤の強度低下をまねく。硬化剤にはユリア樹脂の場合と同様の潜在性硬化剤が用いられるが、室温では十分硬化しないため100℃以下の加熱硬化を行う。通常、硬化剤として約10重量%の塩化アンモニウム水溶液に2~5重量%の塩酸を添加したものが用いられる。木工用の常温硬化樹脂にはユリア樹脂接着剤の併用もしくは共縮合樹脂が用いられる。接着剤中の樹脂分は、合板用が約50重量%、木工用が約70重量%である。なお、大豆グルー、小麦粉、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子が、初期接着力向上、増量、粘度調節、可撓性付与、基材への含浸性付与およびコスト低下を目的としてしばしば添加される。耐インサートクラック性や耐汚染性の改善や価格低下、さらには成形加工性の向上などを目的として、ユリア、グアナミン類あるいはフェノールを用いて変性や共縮合も行われている。
2.メラミン樹脂の性質
2-1.成形材料
メラミン樹脂成形品は、耐熱性、耐水性、耐油性、耐薬品性および耐衝撃性に優れ、かつ、自由に着色できることが特徴である。また、現在では熱可塑性セグメントで変性した耐衝撃性や耐インサートクラック性に優れた成形品もある。しかし、耐酸性に劣る。
2-2.接着剤
メラミン樹脂接着剤は一般的な熱硬化性プラスチック接着剤よりも可使時間が長く、耐熱性、耐水性、耐老化性および表面硬度が良好である。しかし、耐インサートクラック性や耐汚染性などがやや劣る。
3.メラミン樹脂の成形加工
成形は、圧縮、射出およびトランスファー成形法で行われるが、前二者が多い。成形条件は成形品の形状、肉厚や偏肉状態、重量、取り数などによって異なるが、一般的な圧縮成形条件は、金型温度160~170℃、成形圧力20MPa、成形時間は製品厚さ1㎜当り、20~30secである。一般に、ユリア樹脂と比較して硬化速度は幾分遅く、硬化温度は10~20℃高めにする。絵付食器の成形は、まず成形材料を金型に入れ、形がくずれないよう程度に硬化させた後、金型を開き、印刷フォイル(絵模様を印刷した紙にメラミン樹脂を含浸乾燥したもの)を挿入する。再び金型を閉じて高圧をかけ、完全に一体化して硬化させる。さらにグレーズと称する無充填の良流動性メラミン樹脂を印刷フォイルの上に置き、三度押しによって製品に良好な光沢を与える成形技術もある。射出成形は、充填剤の配向によって成形品にクラックが入りやすいため困難であったが、比較的容易なメラミン-フェノール共縮合樹脂があり、また、成形機にも工夫がなされ、寸法安定性、電気的特性の良好な成形品が高い成形サイクルで作られている。射出成形条件は金型温度160~180℃、シリンダ温度は前部が90~100℃、後部が60~80℃、成形時間は製品厚さ1㎜当り15~20secが一般的である。化粧板用メラミン樹脂は、初期縮合物を所望の濃度に調製したワニスか、あるいは噴霧乾燥した粉末状メラミン樹脂では使用直前に温水や水・アルコール混液に溶解したワニスを用いる。化粧板は、表面層は絵模様を印刷した化粧(パターン)紙、その上には化粧紙を保護する表面保護(オーバーレイ)紙、下には芯材層の成分や暗色相の移行を遮蔽する目的の酸化チタンを含む紙素材が用いられ、それぞれにワニスが含浸される。芯材層は化粧板全体に剛性や強度を付与するもので、安価なクラフト紙にフェノール樹脂のワニスを含浸したものご用いられる。各基材の樹脂含浸率は、オーバーレイ紙65~70重量%、パターン紙40~50重量%、クラフト紙40~50重量%程度である。化粧板は、これらの各基材を重ねて高圧積層成形した1枚の板である。成形条件は、温度120~160℃、圧力4~12MPa、時間20~30secである。
4.メラミン樹脂の用途
4-1.成形品
メラミン樹脂成形品は硬くて、上品な感触を持ち、耐水性、電気特性に優れており、衛生上完全に無害なため、皿や茶碗などの各種食器類や化粧板ななどに多量に用いられ、特に食器類は外食産業の発展に伴って需要が増大した。化粧板の用途としては、自由な着色性、良好な表面光沢、高い表面硬度、優れた耐熱性や耐薬品性及び耐摩耗性を生かしたテーブルトップ、建築物や船舶車両の内装材などがある。また、化粧品や薬品のびんやキャップとしても用いられる。
4-2.接着剤
メラミン樹脂全体の約75%が接着剤として用いられている。特に、メラミン樹脂の特徴を生かし、主として、耐水性合板用接着剤や木工用接着剤として用いられている。具体的には、屋外使用の耐水性合板、船舶用合板、コンクリートパネル用つき板、家屋の外装、屋根下地あるいは風呂の内装などの接着剤として用いられている。
4-3.紙及び繊維加工用
紙加工用メラミン樹脂は、紙の湿潤紙力、寸法安定性、印刷適性、耐水性などの向上剤として使用されている。また、摩擦や引裂き及び折り曲げに対する抵抗性も改良することができる。メラミン樹脂加工した織布は、防しわ性、防縮性、引裂き強さ及び耐洗濯性に優れている。
4-4.塗料
塗料用メラミン樹脂は、ユリア樹脂と同様に、メチロール化物をアルコールによってエーテル化することにより水溶性から油溶性のものまで得ることができる。加熱や酸によって縮合反応を起こさせて最終硬化塗膜を得るものである。塗料用メラミン樹脂は、エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂あるいはアルキド樹脂と混合し、さらに顔料を分散させたペースト分散安定剤、消泡剤、レベリング剤などを配合して金属の焼付け塗装用とする。塗膜の性質は、配合するこれらの熱硬化性樹脂の種類や量によって異なる。エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、アルキド樹脂との組合せでは、それぞれ一般に強固な密着性、優れた耐候性、光沢の良い硬度の高い塗膜が得られるため、下地金属の保護や美観および印刷適性付与を目的として塗布される。冷蔵庫や洗濯機などの家電製品、自動車やバイク、カラートタン、アルミサッシなどはこの例である。酸硬化型塗料は、ユリアとの共縮合によって得られた樹脂をアルキド樹脂と併用したもので、低温短時間の硬化が要求される化粧合板用塗料として利用される。メチロール基の多い、あるいはメチルエーテル化した初期縮合物は、水溶性塗料として主として電着塗料に用いられる。メチロール基やメチルエーテル基は反応性に富むので、ヒドロキシアルキルビニルエステル基と反応させて電子線硬化型、紫外線硬化型の塗料とすることもできる。さらに、シクロヘキサノールと反応させると常温での固体の樹脂となり、粉砕すれば紛体塗料用の硬化剤として使用可能な紛体メラミン樹脂を作ることもできる。
〔出典 プラスチック読本、発行元 (株)プラスチックスエージ社〕
メラミン樹脂の用途
- 電気・構造部品(配線・照明部品、プラグ、コンセント
- 配線機器部品、制御部品
- 摺動部品
- 電気・電子部品(電源スイッチ、リレーケース、ブレーカー、テーブルタップ)
- 消孤室
- 食器
- 薬品容器
- 化粧品容器
- 厨房器具