トランスファー成形とは?
トランスファー成形は、主として熱硬化性樹脂の成形に使用され、プランジャー内でいったん加熱軟化させた材料を狭い材料の通り道(ゲート・スプルー・ランナーなど)から加熱されたキャビティの中に押し込んで、金型内で硬化させる方法です。
射出成形とよく似ていますが、トランスファー成形ではプランジャーの中に1回分だけの材料が投入されます。
また、プランジャー内に残った硬化物(カル)を1回の成形ごとに取り除くところが相違しています。
製品の形状や使用されるインサートの種類により、圧縮成形には不向きな製品を成形する際に利用されます。
より精密な寸法精度が求められる成形品や、コイルやモータの封止に適した成形方法です。また、半導体などの電子部品を、低圧封入成形(エンキャップ成形)する際にも用いられます。
1.トランスファー成形の方式
トランスファー成形には、普通の圧縮成形プレスを使用して行う方式と、補助ラムを備えたトランスファー成形機を用いる方法とがある。前者では、金型のみをトランスファー金型にすればよい。これをポット式と呼んでいる。ポット式トランスファー成形のポットに装入された成形材料をキャビティに圧入するのに要する圧力は、50~100MPa程度である。ポット式では型締めと材料の注入を同じ主ラムの加圧力によって行うので、材料注入時に型開きしないようにポットの底面積を成形品の投影面積より15~20%広くする。トランスファー成形で、補助ラム(プランジャー)によって材料をキャビティへ注入するものをプランジャー成形とも呼ぶ。
2.トランスファー成形の長所と短所
トランスファー成形は圧縮成形と射出成形に比べて次のような長所及び短所がある。
2-1.圧縮成形と比べた場合
【長所】
- 注入時にランナーやゲート部で摩擦熱によって発熱するため、硬化時間が短い。
- 均一硬化により寸法精度の高い製品ができる。
- 軟化した材料が注入されるのでインサートを痛めない。
- バリが薄く、仕上が簡単である。
- 多数個取りが容易である。
- 肉厚の成形品や複雑な形状の製品も比較的容易に成形できる。
- 成形で、細く深い穴を作ることができる。
【短所】
- 材料の無駄ができる(カル、ランナー、スプルなど)。
- 高い型締力を要する(通常、圧縮成形の3倍程度の型締力が必要)ので、同じ大きさの製品の成形に対して、大型の成形装置が必要になる。
- 繊維質充填材が配向し、成形品がそりやすい
2-2.射出成形と比べた場合
【長所】
- ショットごとに新しい成形材料が装入されるので、十分高温度に予熱でき、硬化温度を一層短縮することが可能である。
- 注入圧力が比較的低いため、繊維質充填材の配向程度が比較的低く、ソリが少ない。
- 低速低圧成形が可能なため、インサートの保持が容易。
- 低速低圧成形が可能なため、巻き線コイルの間に樹脂を充填する場合、一定の低圧力で巻き線等のインサート変形させることなく、隅々まで樹脂を充填させることができる。
【短所】
- タブレットマシン及び高周波予熱機を使用する必要がある。
- やや自動化しにくい。
3.トランスファー成形機
トランスファー成形機は、金型の開閉を行なう型締機構と成形材料をトランスファポットから金型のキャビティ内に圧入するためのトランスファー機構(補助ラム機構)とによって構成されている。したがって、トランスファー成形機は圧縮成形機にトランスファー機構を付型トランスファー成形機としてはスライド式、ダブル補助ラム式、二重ラム式、アングル式、対向式などがある。その他、連続自動式トランスファー成形機や低圧封入成形用トランスファー成形機などもある。
3-1.上部補助ラム式トランスファー成形機
上部補助ラム式トランスファー成形機は、上押式型締機構の固定盤の上部に下押式補助ラム機構をもつものである。補助ラムの下端にトランスファープランジャーを取付けて、固定盤と可動盤のボルスタにそれぞれ上型と下型とを固定して使用する。型締ラムを上昇させて上下の金型を閉鎖加圧した後、上型のトランスファーポット内に予熱した成形材料(タブレット)を供給する。次に、補助ラムを下降させて、トランスファーポット内の材料をトランスファープランジャーで金型内に圧入する。所定の硬化時間を待って型締ラムを下降させると金型は開放され、最終位置で成形品が下型から突出される。一方トランスファープランジャーは、ポット内のカルをそのまま下方に押し出した後に上昇復帰させる。成形品を取出して金型を清掃した後、上述の操作を繰返して成形する。
3-2.下部補助ラム式トランスファー成形機
下部補助ラム式トランスファー成形機は下押式型締機構の固定盤の下部に上押式補助ラム機構をもつものである。補助ラムの上端にトランスファプランジャを取付けて、固定盤に下型、可動盤に上型を固定して使用するものである。下型のポット内に予熱したタブレットを供給した後上部の型締ラムを下降させて、金型を閉鎖加圧する。つぎに、補助ラムを上昇させて、トランスファポット内の材料をトランスファプランジャで金型内に圧入する。所定の硬化時間を待って型締ラムを上昇させると金型は開放され、その最終工程で成形品が上型から押出される。一方、補助ラムはトランスファプランジャでポット内のカルを上方に押出した後下降復帰させる。これで1サイクルが終了する。
3-3.スライド式トランスファー成形機
スライド式トランスファー成形機は、特に多数のインサートをもつものの成形を能率的に行なうことを目的としたものである。下部補助ラム式の一種で、スライド式圧縮成形機の型締機構の下部に補助ラム機構を設けたものである。上定盤に1個の上型、下定盤に2個の下型を取付けて、一方の下型で成形中にその硬化時間を利用して成形が完了した他方の下型から成形品をノックアウトして取出し、金型を清掃した後インサートの挿入を行なう。さきの下型の成形が完了すれば、上型を上方に開放して、下定盤をスライドさせて下型の位置を交換して、つぎの成形に入る。
3-4.ダブル補助ラム式トランスファー成形機
ダブル補助ラム式トランスファー成形機は、型締機構1基に対して、補助ラム機構を2基備えたものである。二箇所から圧入することができるので、ランナーが相当長くなる多数個取りなどの成形容易になり、また、それぞれの圧入口から異色の成形材料を圧入して、二色の成形品を同時に成形することもできる。
3-5.二重ラム式トランスファー成形機
二重ラム式トランスファー成形機は、補助ラムが型締ラムに内蔵された形式のものである。予熱したタブレットを金型のポットに投入した後型締ラムによって金型を閉鎖加圧する。つぎに、型締ラムに内蔵されている補助ラムによってポット内の材料を金型の中に圧入する。所定の硬化時間を待って型締ラムと補助ラムをともに下降させて、成形品を金型から押出して1サイクルを終る。
3-6.アングル式および対向式トランスファー成形機
アングル式トランスファー成形機は、下押式型締機構に対してトランスファ機構が水平に置かれた形式のものである。溶融樹脂は金型のパーティングラインの部分から圧入成形する。対向式トランスファー成形機は、下押式型締機構に対して左右対向位置にトランスファ機構を備えており、金型の両側から圧入できるようにしたものである。アングル式も対向式も特殊な形状の製品を成形するときに利用される。
3-7.連続自動式トランスファー成形機
連続自動式トランスファー成形機は、自動秤量器、タブレットマシン、高周波予熱機などを装備した成形機である。成形材料の秤量、タブレットの成形、タブレットの高周波予熱、トランスファー成形、製品の自動取出など一連の成形動作が、連動自動式に行なわれる高能率機である。
3-8.低圧封入成形用トランスファー成形機
このトランスファー成形機は、トランジスタ、ダイオードなど微小な電子部品をエポキシ樹脂その他のプラスチックの中に封じ込めて、安定した特性を発揮させるための低圧封入成形に使用されるものである。低圧封入成形は、トランスファー成形圧力が20㎏/㎠~150㎏/㎠位の低圧で行なわれて、一般に成形品の取数が多い。したがって、低圧封入成形用のトランスファー成形機は汎用のトランスファー成形機に比較した場合、金型取付盤の面積が広く、上下盤の平行度、補助ラムの垂直度などが高精度に製作されている。そして、圧入力と圧入速度の微調整ができるようになっている。
4.トランスファー成形品のソリとゲート位置
トランスファー成形では、ゲートの位置が重要で、例えば角棒状のものを成形する場合、中央にゲートをつけると、成形品は弓のように湾曲してしまう。これは木粉やパルプなどの繊維質充填材が、波紋状に配列する(配向という)ために起こる現象である。このように繊維質充填材の配向が起こると、配向方向とそれに対して直角方向の収縮率の差が生じ、内部応力が発生してソリが現れる。一端にゲートを設けると、充填材の配向は棒の軸方向に対して左右対称となり、成形品はそらない。しかし、この場合には充填材の強化効果が少なくなり、引張り強さや曲げ強さが低下する。ゲートの位置や形状を考慮し、ゲート断面はできるだけ広くして充填材の通りをよくし、ゲート部に最大の圧力がかからないようにして、キャビティへの圧力が充分かかるようにすれば、強度の低下をかなり防止することができる。トランスファー成形の場合、ゲート位置や形状により成形品の性能が大きく左右される。
5.トランスファー封止成形
トランスファー成形の長所の一つに、低圧成形が可能という点がある。流動性の良い材料を低い圧力でキャビティ内に注入できるため、インサート物を痛めにくいという特徴がある。トランスファー成形では低圧力で樹脂の充填を行うため、ポッティング成形やキャスティング成形と比べて細部への充填性が良い。例えば、モータモジュールの成形では、巻き線コイルの間に樹脂を充填する必要があり、巻き線の状態によりその性能や特性が変化する。金型の隅々に樹脂を一定の圧力で充填する必要があるが、射出成形で熱可塑性樹脂を使用する場合は、冷却された金型内に溶融した樹脂を充填するため、ある程度高い圧力で樹脂を充填する必要がある。そのため、巻き線やインサートを変形させてしまう。製品の形状が複雑化するのに比例して悪くなるが、トランスファー成形では、これらの形状に対して、樹脂の充填時に複数のタイミングで変速変圧を行い、複雑な形状の成形品に高い充填性を実現できる。
6.トランスファー成形用金型
ポット式と補助ラム(プランジャ式)により、それぞれの金型の構造が異なっている。前者は圧縮成形機をそのまま利用できるのが特徴で、フラッシュタイプの圧縮成形用金型に材料装入室(ポット)を設けただけの手動型となる。後者は、圧縮成形機に補助ラムによる材料の圧入機を取り付けたトランスファー専用機を使用し、金型構造も製品の自動取出装置を付けるなど、やや複雑となる。トランスファー成形用金型の主要部分は、ポット及びプランジャ、キャビティ及びコア、スプルー、ランナ及びゲート、突出し機構、加熱装置、モールドベース、取付板から構成されている。
6-1.ポット式手動型トランスファー成形用金型
ポット式手動型は普通の圧縮成形機を使用してトランスファー成形を行なうようにした構造のものである。トランスファー成形用金型の中で最も簡単なもので、圧縮成形用の平押型の上部にポットを載せた構造のものである。ポット内に成形材料を供給し、プランジャをポットに挿入し、圧縮成形機に入れて加圧すると、ポット内で加熱溶融した成形材料はスプルー、ランナー、ゲートを通ってキャビティ内に圧入される。このとき、金型のポット部に加えられた圧力は溶融材料に対する成形圧力(トランスファー成形圧力)になるとともにキャビティ部の型締力として作用する。ポット式手動型は構造が簡単で設備費が安いという特徴があるが、成形機への出し入れ、金型の分解、成形品の取出など加圧以外の作業をすべて手動で行なわなければならない。ポット式手動型は、小物の成形品、小最生産品、あるいは成形品を取出すのに金型の分解が複雑なものなどに用いられる。
6-2.ポット式取付型トランスファー成形用金型
ポット式取付型も圧縮成形機を使用してトランスファー成形を行なうようにしたものであるが、金型を成形機に取付けて操作することができるような構造になっている。プランジャを成形機の固定盤に取付け、ポットと上型を浮動盤に固定し、下型を可動盤に固定する。ポット内に予熱した成形材料を入れ、可動盤を上昇させると上下の金型が閉鎖される。その後、浮動盤とともに上昇をつづけて、ポット内にプランジャが挿入されると溶融材料はキャビティ内に圧入される。必要な硬化時間を待って可動盤を下降させるとまずプランジャがポットから抜け、つづいて浮動盤がタイバにポットされているストッパに当たる。ここで上下の金型が開放される。可動盤が下降をつづけて、最終位置で成形品が下型から突出されて停止する。ポット内のカル(スプルー部を含む硬化した部分)はプランジャに付着して取出される。このようにポット式取付型は、金型の開閉はもちろんのこと成形品やカルの取出しも自動的に行なわれる。圧縮成形機を使用して金型を取付けてトランスファー成形ができるため設備費や経費が安いので、比較的よく利用される形式である。
6-3.補助ラム式トランスファー成形用金型
補助ラム式トランスファー成形用金型は、型締機構とは別に補助ラムによる成形材料の圧入機構(トランスファ機構ともいう)をもっている補助ラム式トランスファー成形機に取付けて使用するための金型である。金型の構造は、中央に材料を挿入するためのポットが設けられている。成形機の型締機構によって金型の分割面を閉鎖加圧する。次にポット内に予熱した成形材料(タブレット)を入れる。補助ラムを操作して、その先端に取付けられているプランジャをポット内に挿入し、ポット内の溶融材料をランナー、ゲートを通してキャビティ内に圧入する。所定の硬化時間を待って金型を開放し、その最終工程で成形品を金型から突出す。一方、プランジャはポット内のカルを押出した後に上昇復帰させる。補助ラム式は金型のキャビティ部を完全に閉鎖加圧しておいて、ここにポット内ですでに可塑化された溶融材料を圧入するのであるから、金型キャビティ部での埋込金具の保持が確実に行なうことができる。また、成形品の穴や窓などの部分を構成するコアピンやスライドコアが確実にその位置を保持するような金型構造とすることができる。
6-4.低圧封入成形用金型
低圧封入成形用金型は、補助ラム式トランスファー成形用金型と同様の構造をしている。埋込まれる品物が小さくてこわれやすいので、数十個をまとめて成形できるように専用の治具にセットして、この治具を金型に挿入したまま成形するのが特徴で、溶融時の粘度がとくに低い成形材料を使用して、普通のトランスファー成形の数十分の一という低い成形圧力で成形する。このため金型は、バリが絶対に出ないように各部を高精度に製作しなければならない。また、成形品にわずかでもスができると製品の機能が低下するから金型内のエアやガスの排出には十分な配慮が必要である。
6-5.ポット及びプランジャ
ポットは成形材料を加熱し、軟化流動性を持たせた材料を圧力によって、スプルー、ランナー、ゲートを通してキャビティに押し込むところである。ポットの形状は、成形品の形状および配列方法に応じて、円形をはじめどのような断面でも問題はないが、機械加工が容易な円形が普通である。ポットの低面積は、金型を締め付けるのに十分な面積を確保する必要がある。すなわち、ポットの低面積は成形品の投影面積より10~25%大きくして、溶融した材料がキャビティ内に押し込まれる際に、その圧力によって金型の上下のパーティングラインが浮き上がらないようにする。また、ポット内では、成形材料に予熱が行われるので、十分な加熱面積を持たせる必要があります。プランジャは、ポットにはめ込んで材料を金型内に圧入するもので、ポットの形状に合わせて作る。ポットとのハメアイは、成形する材料の種類とメッキの厚みを考慮して作る。また、プランジャの周りには、深さ1ミリ幅4~5ミリの溝を付けて、圧入の際に生ずるバリによるハメアイ面の損傷を防ぐ。ポット式金型ではポット底面のスプル穴より材料を射出するが、成形後ポットに残るカルを取り除くため、プランジャの先端にはアンダーカット(テーパ溝)を設けてある。一方、補助ラム式金型では、カルはランナーと共に下型に残るため、テーパ溝を設ける必要はない。また、型が開かない条件を満足するS(㎠)は、主ラムの型締力F(N)と補助ラムの注入力f(N)との力比(通常5:1程度)及び成形品(ランナーを含む)の投影面積A㎠から決定される。また、金型設計の都合上、ポットの内径を大きくとりたくない場合もある。この時には、型開きしない範囲内で注入力を決めればいい。
6-6.スプルー、ランナー及びゲート
スプルーの先端部の断面積はゲートの総断面積に等しいくらいが良い、また、スプルーのテーパは材料の流れを良くしカルの抜き取りを容易にするために、8~12°ぐらいが適当である。スプルーの大きさは大きくするほど材料ロスが多くなるので、なるべく小さい方がいいが、小さいと大きな注入圧力と長い注入時間が必要になる。スプルーの長さは、通常、金型の構造によって決まるが、なるべく短い方が良い。形状は、ポット底面側を太く、成形品側を細くする。ランナーの断面形状は、円形、半円形、台形、長方形の種類があるが、半円形または台形がよい。ランナーは、キャビティ充填前に材料が硬化してしまうのを防ぐために、できるだけ短い方が良い。また、成形温度と成形圧力の兼ね合いもあるが、太さはキャビティ到達前に硬化しない程度の太さにする必要がある。ランナーの配置は複数個取りの場合、長さを等しくする方が良い。ランナーやゲートは通常、突出しピン(エジェクタピン)のある方の型に彫り込む。ゲートの断面形状は、円形、半円形、長方形の種類があり、ゲートの種類としてピンゲート、サイドゲート、ダイレクトゲート、ファンゲート、フィルムゲートがある。なお、ガラス繊維やその他の無機質の充填材を混入した成形材料は、特にゲート部を摩耗させやすいので、ゲート部は交換できるようにデザインしたものがある。
7.トランスファー成形の成形工程
トランスファー成形は、材料の計量、予備加熱、材料の装てん、材料の圧入、加熱硬化、成形品取出の順序で実施される。
7-1.材料の計量
成形材料の必要量を計量する。成形品の重量のほかにポット内のカル、スプルー、ランナー、ゲートなどをすべて含めて成形材料の所要量を決めなければならない。計量した成形材料は、操作を容易にするために所要の寸法、形状のタブレットにする。なお、計量後の成形材料は、不良の原因となるので湿気の多いところや温度の高いところに長時間放置してはならない。
7-2.予備加熱
トランスファー成形の場合は、その成形方法の性質上成形材料の予備加熱が必要条件のひとつである。成形材料の予備加熱には高周波加熱が最も有利であるため広く採用されている。これは、成形材料が自己発熱によって短時間に内部まで均一にしかも高温まで加熱できるためである。予備加熱の最適の条件は、成形材料の種類、ポットの温度、成形材料の加熱時間、成形圧力、圧入時間、金型の構造、金型温度、硬化時間などによって決められる。
7-3.材料の装てん
高周波予熱を施された成形材料は、できるだけ速やかに所定の温度に加熱されたポットの中に装てんされる。高周波予熱された成形材料をポットに装てんするまでの時間が長すぎると、所定の高温に予熱された材料の流動性を悪化させることになる。高周波予熱の効果を損じないように速やかに操作することが必要で、材料の装てんに際してはポットの中でタブレットが傾かないように平均に装てんする。
7-4.材料の圧入
所定の温度に高周波予熱された成形材料は所定の温度に保たれているポット内に装てんされた後必要に応じて15~45秒ぐらい加熱して、最大の流動性をもつように可塑化された状態でトランスファプランジャによって閉鎖加圧された加熱金型の中に圧入される。このとき、成形材料の種類とその状態、成形機や金型の構造、成形条件なによって異なるが、トランスファー成形圧力は500~2000㎏/㎠、圧入時間は5~50秒ぐらいである。
7-5.加熱硬化
所定の温度に加熱された金型内に圧入された成形材料は、金型の中で熱硬化が完了するまで加圧がつづけられます。硬化時間は、成形材料の種類、予備加熱条件、金型の構造などによって異なり、通常30~180秒くらいです。この際、もし成形材料が十分に可塑化されずに、または、硬化がいくらか進行した状態で圧入された場合は、所要の形状寸法の成形品が得られなかったり、埋込み金具類を損傷したりします。また、金型内における加熱の過不足による加熱硬化条件の不適は、成形品の特性を低下させたり、成形能率を下げたりするので、金型温度の適正化には十分注意しなければなりません。
7-6.成形品取出
成形材料が金型内で完全に加熱硬化した後加圧をやめて金型を開放し、成形品を取出す。このとき、ポット内のカルやスプルーなども完全に取除き金型の清掃と調整を行ない、成形操作に支障をきたさないように注意することが必要です。
8.トランスファー成形の成形条件
トランスファー成形の成形条件としては、成形材料の予熱温度、トランスファー成形圧力、圧入時間、金型温度、硬化時間などがあげられる。
8-1.成形材料の予熱
成形材料の予熱温度は、成形材料の種類、成形機や金型の構造機能、成形材料をポットに装てんするまでの時間、ポットの温度、金型の温度などによって圧入の際に最大の流動性が得られるように設定しなければなりません。
8-2.トランスファー成形圧力と圧入時間
予熱された材料はポット内に装てんされ、ここで加熱可塑化された後トランスファプランジャによって金型のキャビティ内に圧入されます。この圧入工程がトランスファー成形の重要な過程の一つであり、すなわち、ポット内で最大の流動性をもつように可塑化された材料を、硬化反応がはじまる直前に最適なトランスファー成形圧力と速度で金型のキャビティ内に圧入しなければなりません。
8-3.金型温度と硬化時間
ポットから金型へ圧入された成形材料はキャビティ内でさらに加熱がつづけられ、架橋反応が行われて硬化します。なお、成形材料は圧入工程において、ゲートを通過するときの摩擦熱によって温度が上昇します。ゲートの断面積が小さいほど、また圧入速度が速いほど高い摩擦熱が発生します。金型温度は、成形材料の種類や硬化性などを考慮して設定しなければなりません。硬化時間は、成形材料の種類、成形品の大きさ、形状、肉厚、予熱条件、圧入条件などを検討して設定する必要があります。
〔出典 プラスチック読本、発行元 (株)プラスチックスエージ社〕
トランスファー成形の特徴
- インサートの保持が容易で確実にできるので、変形し易いインサートを使っても成形が可能である
- 深い穴のある形状の製品の成形が可能
- 金型を閉じた状態で成形材料を投入するため、寸法精度の優れた製品の成形に適している
- バリが薄いので、仕上が容易
- 成形品全体が均一に硬化するので、成形後のソリや歪みが少ない
- 圧縮成形よりも高周波余熱温度を高くすることができるので、肉厚が均一でない製品や複雑な形状の製品の成形が容易かつ効率的にできる
- 圧縮成形に比べて、硬化時間を短縮できる(プレヒーター使用時)
- 成形時の配向により、強度は圧縮成形により作られた製品より劣る
- カル・ランナー・ゲート・スプルー部分の材料が無駄になる