ビニルエステル樹脂とは?
ビニルエステル樹脂の特徴
ビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の開環付加反応により合成されることから、以前はエポキシアクリレート樹脂と呼ばれていた。
不飽和ポリエステルが不飽和酸を含む二塩基酸とグリコールから生成する重縮合エステルを主鎖とし、重合性モノマーに溶解した樹脂であるのに対して、ビニルエステル樹脂は末端にのみ不飽和基を持った主鎖化合物を重合性モノマーに溶解した樹脂を言う。
不飽和ポリエステルと同様にビヌルモノマーに溶解した形で使用され、ラジカル発生開始剤により硬化するため、成形方法、用途は不飽和ポリエステルとオーバーラップする。
1966年に変性エポキシ樹脂として上市されて以来、その優れた耐薬品性と靱性から、耐食FRP、機能性FRP、接着剤、光硬化用として需要がある。
ビニルエステル樹脂の製法
一般に、原料であるエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との付加反応物を主鎖化合物とし、スチレンなどの重合性モノマーで希釈した形で使用される。
ビニルエステル樹脂の性質
使用するエポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、重合性モノマーの種類により、また、変性方法によって異なった性質のものが得られる。一般的な性質としては、機械的性質、特に靱性に優れており、原料に多官能型エポキシ樹脂を用いると耐熱性が向上する。耐薬品性は、不飽和ポリエステルよりも格段に優れている。また、ガラス繊維などの基材との接着性に優れている。
ビニルエステル樹脂の成形加工
不飽和ポリエステルとほぼ同様であるが、常温硬化用有機過酸化物としてハイドロパーオキサイド(例えばクメンハイドロパーオキサイド)とパーオキシエステル(例えばt-ブチルパーオキシエンゾエート)の混合系とコバルト系促進剤との組み合わせが最も良い硬化特性を与える。また、加熱硬化系にはジー(4-t-ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート)とクメンハイドロパーオキサイドの組み合わせがよく用いられる。成形加工法は不飽和ポリエステルと同様である。
ビニルエステル樹脂の用途
耐食用
耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性に優れた特性を生かし、化学、パルプ、肥料、繊維工業などの薬液貯蔵タンク、パイプ、ダクト、ベンチレータ、タンクローリなどの耐食FRPあるいは樹脂ライニングとして使われている。また、重防食塗料としてはガラスフレークコンパウンドが用いられ、排煙脱硫装置、コンクリート受水槽、工場床、ケミカルタンカーなどの内面塗装、石油タンクのボトムライニングなどに使われている。
高強度FRP
優れた靱性とガラス繊維との接着性のよさから、まず、バイク用ヘルメットとして使われ、最近では、クルーザーなどの高速艇、プレジャーボートなどに使われ始めている。
光硬化用
アクリロイル基の紫外線による光硬化性を利用した電気・電子用プリント配線基板のソルダーレジストインキ、金属缶のコーティングとしての利用がある。
その他
淡色ビニルエステル樹脂の開発とともに、耐熱水性、靱性などの利点と淡色とを組み合わせた、人造大理石調のバスタブ、キッチンカウンターなどの用途がある。
〔出典 プラスチック読本、発行元(株)プラスチックエージ社〕
ビニルエステル樹脂の用途例
- 薬液貯蔵タンク
- パイプ
- ダクト
- ベンチレータ
- タンクローリ
- 排煙脱硫装置
- コンクリート受水槽
- 工場床
- バスタブ
- キッチンカウンター